OIVと登録品種について

「OIV」とは?

 

OIV(国際ブドウ・ワイン機構)とは、「Office International de vigne et du vin」の略称で、ブドウ栽培やブドウ品種、ワインづくりに関する総合的な研究機関。フランスに拠点を置き、1924年に前身となる団体が設立されて以来、さまざまな研究、発表を行ってきた政府間組織です。

OIVには、2021年時点で48か国が加盟。現在加盟中の48か国で全世界のワイン生産量の約85%近くを占めると言われています。ちなみに日本とアメリカは加盟していません。

OIVは、各種統計の発表や、研究集会を開催するほか、“ラベル表示”などに関する基準の制定も行っており、EUにおいては、OIVが“独自のブドウ品種”として承認したブドウの名前だけが、ワインラベルの品種名に表示できるようになります。

現在、OIVに登録承認されている日本のブドウ品種は、「甲州」と「マスカット・ベーリーA」、さらに「山幸」の3種類のみ。2010年に白ワイン用の「甲州」が登録され、次いで2013年に赤ワイン用の「マスカット・ベーリーA」が、そして2020年に「山幸」が登録承認されています。

OIVの登録品種として承認されることにより、日本固有のブドウ品種名を表示したワインを、EUで販売することが可能となります。その意味で、OIVの登録品種になることは、日本ワインがEU諸国のワイン市場の扉を開く、第一歩となるのです。

私たちは、既存3種のOIVブドウ生産の活性化と同時に、OIV日本ワインの市場拡大、さらには日本生まれの多様性に満ちた新たな固有品種のOIV登録承認のサポートもしていきたいと考えています。

 

「登録品種」について

 

甲州 KOSHU
(2010年登録承認)

山梨県で発見された「甲州」は、800年以上もの長い歴史があるぶどうです。 果皮は赤紫色で、白いブルーム(果粒)に覆われています。 果汁が豊富で果肉はやわらかく、甘みの中に適度な酸味があり、わずかに 渋みを感じることもあります。 甲州ぶどうの発祥には2つの説があります。 1つは、1186年にぶどうの産地で ある勝沼で雨宮勘解由(かげゆ)という人が発見したという説。 もう1つは、 奈良時代に僧が発見したという説です。 どちらが真実なのか明らかではあり ませんが、古い時代から日本に存在していたことは確かです。 ワインが作られるようになったのは明治時代になってからで、現在も甲州を 使ったワインは山梨県の特産です。 2010年(平成22年)には、OIVに初の国内品種として登録され、EU諸国に ワインを輸出する際に「甲州」という品種名を記載できるようになりました。 また長い間、甲州ぶどうの起源は不明でしたが、2013年にそのルーツが解明 されました。 酒類総合研究所が行ったDNA解析によると、甲州は欧州系の ヴィニフェラ種と中国の野生種との交雑により誕生したそうです。 約7割が 欧州系のヴィニフェラ種で、残りが野生種とのことです。

 

マスカット・ベーリーA  MUSCUT BAILEY A
(2013年登録承認)

世界に誇る日本の黒ブドウ品種、「マスカット・ベーリーA」。 1927年に岩の原 葡萄園の創業者にして、日本ワインぶどうの父とも謳われる川上善兵衛によって作出 された同品種は、今もなお日本ワインにとって重要な存在です。 マスカット・ベーリーAはイチゴやキャンディを思わせるカジュアルなワイン を生み出すことで知られていますが、現在では栽培方法や醸造などが見直されて おり、赤ワインはもとより、ロゼやスパークリングなど、多種多様なスタイルが 誕生しています。 アメリカ系ベーリー種とマスカット・ハンブルグ種との交配で誕生したブドウ 品種、マスカット・ベーリーAは、日本で最も仕込まれている赤ワイン用ブドウ 品種の一つといっても過言ではありません。 主な生産地としては圧倒的な生産量を誇る山梨県が1位、2位が山形県、3位が 長野県と続きます。 ただしマスカット・ベーリーAは、日本の気候や土壌に適応 しやすいことから、北海道を除く本州から九州まで、幅広い場所で栽培されて いることも特徴の一つです。 因みに上位3県には入っていないものの、そもそもの生誕地である新潟県でも 今なおしっかりと栽培されています。

 

山幸 YAMASACHI
(2020年登録承認)

202011月、甲州、マスカット・ベーリーAに次いで、3番目のOIV登録品種として 承認された「山幸」は、北海道池田町が産み出した赤ワイン用のブドウ品種です。 池田町では1963年から国内初の自治体経営によるワイン醸造を開始して いましたが、同町が位置する十勝地方は2月頃にマイナス20度に達するという 極寒の地。 一般的なブドウは越冬できないといった課題を抱えていました。 そこで、耐寒性や収量性を目的にフランスの「セイベル13053」をクローン選抜。 1969年にワイン用赤品種、「清見」が誕生します。 清」は優れたブドウ品種では あったものの、極寒の十勝を越冬するためにはさらに対策が必要でした。 そこで、池田町ブドウ・ブドウ酒研究所は、清見と在来種である「山ブドウ(6号園 20オス)」を交配した新品種の開発に着手。 そしてついに山幸が誕生しました。 山幸は、極寒の地だからこそ生まれた、土着品種といっても過言ではありません。 耐寒性や耐凍性に優れていることはもちろん、良質なワインを生み出すことでも 知られています。 (ちなみに、マイナス31度まで耐えられるとか) 山幸から造られるワインは色合いが濃く、渋みや味わいもしっかりとした印象。 山ブドウがベースにあることから、野性味も感じられる他に類を見ない味わい を楽しむことができます。 ボディがしっかりとした山幸がOIVに登録されましたが、山幸のベースとなった 清見にもOIV登録の期待が寄せられています。

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